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第1話 恋愛の始まり

「ちょっといいな」と思うことは、恋愛の始まりなのだろうか。
ただ、この「ちょっといいな」は意外とやっかいだ。
伝えなくてはいけないほど強い気持ちではない。
だから、夏の暑い夕暮れに、ふと吹いた涼やかな風のように、
一瞬で通り過ぎてしまって、あとには何も残らない。

数年前、新入社員研修で、僕は宮原希美を「ちょっといいな」と思った。
その思いも、研修が終わり、勤務地が離れるのと同時に消えていった――はずだった。

今年の春、地方勤務だった何人かが東京本社に戻ってきた。
その中に希美もいた。
希美は相変わらず、人のよさそうな、優しそうな、
どこか頼りなげな雰囲気でほほ笑み、
「新、久しぶりだね。元気だった?」と声をかけてきた。
ただそれだけのことで、
僕はまた「希美っていいな」と思った。

それから僕は毎日、出社するたびに、
希美とばったり会わないかなと期待している。
だけど、希美も僕も、製薬会社のMRという仕事がら
一日中外出していることが多いので、なかなか会えない。
かといって、自然に任せていたら、何も起こらず、
以前と同じようにそのまま消えていってしまう。
そう思って僕は、きっかけをつくる決意をした。

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