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私と彼は、ただの同期。そんなのわかってるけど、胸が痛んで……

正しい成分表のシール印刷ができ上がり、
私たちは江東区にある工場へ向かった。
大手の化粧品会社は自社工場を持っているところが多いけれど、
うちは提携先の工場に製造を委託している。
工場の担当者に頭を下げて借りた作業室に入ったところで、
積み上げられた段ボールを見て息を飲んだ。

「これ、全部、貼り替えるんだよねぇ……。
何時までかかるかな」
最年長の黒木さんがひとり言のようにつぶやいた。
作業する前から、みんなげんなりした顔をしている。
だけど私だけは、たくさんあってよかった、と思った。
だって、雄吾と一緒にいられる時間が長くなるから。

こんな状態だから、人手は少しでも多いほうがいい。
雄吾が手伝ってくれることを、部署のみんなは喜んだ。
雄吾はNYへ赴任になる前、販売促進部にいたことがあり、
うちの部署のみんなとは顔なじみだ。

「ちょうどいいタイミングで、
玲美ちゃんと食事の約束してたね」
アラフォーの明子さんがほがらかに言った。
「あら、せっかく玲美ちゃんとデートだったのに、ごめんねぇ」
黒木さんが冗談半分で言った『デート』という単語に
ドキッとする。

だけど雄吾は顔色ひとつ変えずに笑った。
「デートなんかじゃないですよ」
その通り。同期で一緒にご飯を食べるだけのただの食事。
わかっているけれど、胸がチクリと痛んだ。

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