お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。
雑学 海外旅行

ノルウェー人の健康の源―とんでもない味と臭いのトランとは?「タラの肝油」

ノルウェーで広く飲まれているトランは、黄色がかった透明のオイル

ノルウェーでは、冬の間、日照時間が極端に短くなります。北極圏内に入る北ノルウェーでは、冬至の前後2ヶ月ほどは太陽が全く顔を出しません。太陽が出ないため、気分が沈みがちになったり、朝起きるのが辛かったりという体調の変化を訴える人も多くいます。

■日照時間が少ないとビタミンが不足する!

その理由の一つが、太陽の光を浴びないことによって、人間の体に不可欠なビタミンDが不足すること。ビタミンDは、紫外線を浴びることによって皮膚内で生成されます。

カルシウムを体内に吸収するために必要なビタミンDは、欠乏すると子供の骨が変形してしまう「くる病」や、骨がもろく折れやすくなる骨粗しょう症を引き起こしてしまう可能性だってあります。

ビタミンDは食品にも含まれていますが、一日に必要な量を食べ物から摂取するだけではなかなか大変。ところが、夏の強い太陽光なら、一日10分ほど浴びれば十分な量のビタミンDが生成されるのです。しかし、太陽がまったく出ない冬のノルウェーでは、不足するビタミンDを別の形で摂取しなくてはなりません。

■ビタミンDを豊富に含むタラの肝油

その補てんのために重宝されているのが、タラの肝油である「トラン」です。

ノルウェーでは、昔からタラ漁が盛んです。タラの肝臓からとれる油はトランと呼ばれ、ランプの燃料などとして長く使われていました。1854年、薬剤師であるペーテル・モラーが新しいトランの製造法を開発し、食用としても使用できるトランが生産されるようになりました。

トランには、ノルウェーで不足しがちなビタミンDが豊富に含まれているため、人々の健康を守るために摂取することが推奨され、広く一般に飲まれるようになったのです。

近年、トランにはビタミンDだけでなく、ドコサヘキサエン酸((DHA))、エイコサペンタエン酸((EPA))といった「オメガ3」と呼ばれる不飽和脂肪酸が多く含まれていることが分かりました。オメガ3は、心臓や血管の疾患を予防する効果が高く、トランは現代人の健康を守る強い味方と言えます。

ノルウェーでは、赤ちゃんは生後4週からトランを摂取することが望ましいとされています。生まれて間もない、離乳食も食べ始めていない赤ちゃんに魚の油を飲ませるなんて驚きですが、ビタミンDは赤ちゃんにとっても必須の栄養素なのです。

■良薬口に苦し

よいことばかりのトランですが、一つ問題があります。それは、ニオイと味。昔にくらべるとだいぶ飲みやすくなったとは言われますが、それでもトランに慣れていない日本人にとってはとても口にできる代物ではありません。

例えるならば「腐った魚を漬け込んだ油」とでもいった感じでしょうか。とにかく、飲み込むことすら困難で、飲み込んだとしても、そのあと胃からこみあげてくるニオイとむかつきは抑えようもありません。

小さなころからトランを飲み慣れているノルウェー人にとっても、おいしいとは言い難いこの味。各メーカーは工夫を凝らし、より飲みやすいトランの開発に力を注いでいます。
レモン風味、フルーツ風味、また、無味無臭のカプセルタイプやお菓子感覚で食べられるグミタイプなど、健康志向の高いノルウェー人は、自分に合ったタイプのトランをこまめに摂取しています。

飲みやすいグミタイプのトランは、ノルウェーの子供たちに人気

■世界に広がるノルウェーのトラン

ノルウェーのトランは、その品質の高さから世界中で使われています。毎年2月から4月にかけて、北極圏のロフォーテン諸島周辺で釣り上げられるタラは、新鮮なうちに工場へ運ばれます。タラの肝臓は、釣り上げられて24時間以内にトラン製造ラインへと送られ、厳しい品質管理のもと、製品へと姿を変えます。

昔からノルウェー人の健康を守ってきたトランが、海を越えて多くの人たちの健康増進に役立っているのです。

(文・御供理恵)

■著者プロフィール

御供理恵(みともりえ) 東京学芸大学大学院心理学講座修了。ノルウェー人の夫の転勤に伴い、オランダ、ルーマニア、韓国と引越しを重ねる。2010年からは北極圏の町、ノルウェー・アルタ在住。難民受け入れセンターでソーシャルワーカーとして働きながら、ライターとして雑誌・インターネット・テレビなどを通じ、日本に向けてノルウェーから情報発信している。

お役立ち情報[PR]