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雑学 生活

映画「トータル・リコール」のように記憶は操れるのか?―「過誤(かご)記憶」で記憶を操作できる

映画「トータル・リコール」では、記憶を売買するビジネスが描かれていた。誰かの記憶を使って擬似的にでも経験ができるなら、短時間で多くを学べるに違いない。

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人間の記憶は操作できるのだろうか? マウスの海馬に刺激を与え、イヤな記憶を蘇らせる実験に成功したというから、楽しい記憶を好きなときに思い出せるようになる日は、そう遠くないのかも知れない。

■盗まれた記憶

マウスによる実験は、独立行政法人理化学研究所を中心とした研究チームによって成功した。脳の海馬(かいば)に刺激を与えることで記憶を蘇らせ、いま起きているような勘違いを作り出せるという。手順はシンプルで、

1.箱Aに入れる

2.脳に刺激を与える

この2つで、脳への刺激=箱Aの中にいる、を関連づけさせるのだ。

つぎに、

3.箱Bに移す

4.電気ショックを与える

5.箱Aに戻す

をおこなうと、箱Aに戻すとリラックスするのに対し、箱Bに入れただけでも電気ショックの記憶が蘇り、身構えるようになる。犬にエサを与える際にブザーを鳴らすと、やがてはブザー音だけでよだれを垂らすようになるのは、パブロフの犬として有名な話で、ここまでは当たり前の条件反射と言えるだろう。

ただし、4.を「脳を刺激しながら、電気ショックを与える」に変えると、結果は180度変わり、「脳への刺激=箱Aの中にいる」に電気ショックのイヤな記憶が関連づけられ、箱Aに戻されたマウスは恐怖を感じるようになってしまうのだ。

実際は、箱Aの中でイヤな体験はしていない。電気ショックを受けたのは箱Bだから、そこで恐怖を感じるのはもっともだが、箱Aで過ごしていた安泰な記憶は盗まれてしまい、あたかもイヤな生活をしたかのようにすり替えられてしまうのだ。

これは現状と一致しない誤った記憶であることから、過誤(かご)記憶と呼ばれている。

ありがとう過誤記憶。月に代わってお仕置きも、ずいぶん楽になるに違いない。

■偽りの幸せ

イヤな記憶を蘇らせることができるなら、きっと同じ原理で楽しい思い出も呼び戻せるだろう。そのためには、機能的核磁気共鳴映像法(fMRI)と呼ばれる長い名前の装置を使って、海馬のどこに刺激を与えれば良いかの調査から始めよう。

人間ドックや病気の診断に使われるMRIに似た装置で、活発に活動している脳の場所を知ることができるため、うれしい/楽しい/快いなど望ましい体験で活発になる部分を把握しておこう。ただしMRIでも定価は数億円に及ぶというから、それなりの出費は覚悟しなければならない。

fMRIなしの格安プランで進めるなら、先の実験のように、刺激する部分をあらかじめ決めておけば、マウスと同程度の結果は得られるだろう。

つぎに、脳に刺激装置を取り付けたまま生活し、思い出にしたい体験をした際にスイッチをOnにする。これを繰り返せば、脳への刺激=良い思い出、の構図が出来上がるはずだ。条件反射と呼べるレベルに達したら完成だ。

これでいつでも良い思い出を復活できる! 上司に怒られても、彼女にフラれてヘコんでも、いつだってスイッチ一つでハイな気分になれること請け合いだ。

ただし過誤のことば通り、蘇るのは現実と一致しない誤った記憶でしかない。つまりは、この方法で良い記憶を蘇らせても現実逃避に過ぎず、使い続ければ現実と対峙できず、何ごとにも対処できない人になってしまう。

そっとしておいてくれ。明日につながる今日ぐらい。

スイッチOnで痛い人では、莫大な予算をかけて望ましくない結果に加え、脳に刺激装置付けっぱなし状態のビジュアルが加わり三重苦となってしまう。これなら二日酔い覚悟で酒をあおり、クダをまいている方がよっぽど健康的だ。

というわけで、今回も玉砕。

■まとめ

過誤記憶は、言い換えれば記憶の混同に過ぎないから、体験していない記憶は蘇らない。他人の記憶を自分のもののように蘇らせるには、別の方法を見つけねばならず、もう少し先の話になりそうだ。

映画のように商売するなら、自分の記憶はいくらで売れるだろうか? しめて数百円では立ち直れないので、査定してもらうのはヤメにしておこう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

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