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人間はどこまで速く走れるのか?「9.44秒」

ウサイン・ボルト選手は現在世界で一番足の速い人類です。100メートル走で9秒58という世界記録を持っています。驚くべき記録ですが、では、人類はどこまで速くなることができるのでしょうか。

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ボルト選手は予想外の速さ

ウサイン・ボルト選手の世界記録は世界中を驚かせました。特に、人間がどこまで速くなれるのかを統計学の立場から分析していた人々は、一斉に驚きの声を上げたのです。というのも、その予測によれば、これほどの記録がこんなに早く出るとは考えていなかったからです。

それまでの統計学者の分析は、「2100年に9秒54ぐらいに到達することができるだろう」というものだったのです。ウサイン・ボルト選手の2009年の記録「9秒58」はこれを大きく裏切ったのです!

速く走るための条件とは!?

100m走で速く走るためには以下の条件が必要と考えられてきました。

●体がそこそこコンパクトであること
空気の抵抗を小さくして、スピードのロスをなくすためです。

●動きの速い筋肉を持つこと
足の回転を速くするためには、動きの速い筋線維を持っていなければなりません。体が大きくなると、その筋線維は速く動くことが難くなる性質を持つと考えられてきました。

これは、大きなクマよりも、小さなネズミの方がよく動く筋肉を持っているのと同じです。また機敏に動く筋肉の方がスタートにもよく反応できると考えられます。

しかし、ボルト選手は身長196cm、体重86kgと堂々たる体格です。とてもそれまで考えられてきたような短距離走選手に向いた体とはいえません。

では、なぜボルト選手はこれほど速く走れるのでしょうか。

ボルト選手は常識を覆した!

専門家が分析した結果、これまで重要な要素と考えられてきた「スタートの速さ」「ピッチ=1秒間の歩数」よりも、「レース中の最大速度」「ストライドの長さ」こそがより重要なファクターであるという意見が出てきました。

日本陸上競技連盟の科学委員会 副委員長でもあり、現在鹿屋体育大学教授である松尾彰文先生に伺ったところ、ボルト選手のストライドは「2m75cm」もあるのだそうです。ちなみに1991年に9秒86をマークしたカール・ルイス選手のストライドは、伊藤章先生の分析によれば「2m53cm」だそうです。ボルト選手がいかに突出しているかが分かります。

また、普通なら加速が鈍る60m以降でもさらに加速し、70mまでに時速44km(秒速12.35m)の最大スピードに達しています。

アメリカの専門家はボルト選手が、この長身にもかかわらず速く動く筋線維を持っているのだと指摘しています。

人間はどこまで速く走れるか?

ボルト選手によって、統計学者の予測は大きく変更されています。ペンシルベニア州立ブルームズバーグ大学のReza Noubary氏は「究極の記録」として「9.44秒」と計算しています。

松尾彰文先生は、「ボルトの足の回転が、日本の選手並みに速かったら」「もしそういう選手が現れたとしたら」という前提で、「8秒6」という数字を提示されています。

「8秒台」というと、信じられないような数字ですね。果たして人間はどこまで速く走れるのでしょうか。興味は尽きません。

●……この記事は松尾彰文先生に監修していただきました。

(高橋モータース@dcp)

※この記事は2013年09月21日に公開されたものです

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