楽しいことが1割だとしても、恋愛するって絶対に豊かなこと
極少数の限られた女性の胸にだけ咲く美しい花をめぐってストーリーが展開される映画『シャニダールの花』。この花を美しく満開にさせるために研究している植物学者・大瀧を綾野剛さん、花を芽吹かせている女性の精神面をサポートするセラピスト・響子を若手実力派女優の黒木華さんが演じました。ファンタジックな設定でありながらも、大瀧と響子が次第にひかれていく様子や2人の距離感のバランスが壊れていくところなど、どこか現実味のある映画に出演されたお2人に、映画の感想や恋愛観を伺いました!
【プロフィール】
綾野剛さん
1982年生まれ。『仮面ライダー555』(03/EX)で俳優デビュー。その後、『Life』(07/佐々木紳監督)では映画主演とともに音楽監督を務める。『Mother』(10/NTV)、『最高の離婚』(13/CX)、『空飛ぶ広報室』(13/TBS)などのドラマにも出演し話題に。ほかには、『奈緒子』(08/古厩智之監督)、『GANTZ PERFECT ANSWER』(11/佐藤信介監督)、『ヘルタースケルター』(12/蜷川実花監督)など。今後は『ガッチャマン』(13/佐藤東弥監督)、『夏の終り』(13/熊切和嘉監督)などの作品が控えている。▼綾野剛 オフィシャルサイトはこちら
黒木華さん
1990年生まれ。NODA・MAP番外公演『表にでろいっ!』(10)で、中村勘三郎、野田秀樹との3人芝居で娘役として出演。『東京オアシス』(11/松本佳奈・中村佳代監督)にて映画デビュー。『おおかみこどもの雨と雪』(12/細田守監督)では声優として出演。そのほかの出演作は、NHK連続テレビ小説『純と愛』(12)、『草原の椅子』(13/成島出監督)、『舟を編む』(13/石井裕也監督)など。今後は『くじけないで』(13/深川栄洋監督)、『小さいおうち』(14/山田洋次監督)への公開が控えている。▼黒木華 オフィシャルサイトはこちら
Text:Hikari Togawa
何から何まですべてがかっこいいんです!
出演のお話があったとき、「監督ご自身が作品みたいな人なので、石井岳龍監督がかもし出しているものが映像化するんだったらその作品に参加したいな、と素直に思ったことを覚えています」と綾野さん。完成した作品を見たとき「見たことない映画でした。かつ、音がすごいな、と。冒頭からこの世界観を示すランドマークみたいな音だったので、『引き込むな、石井さん!』って思いました」と、石井岳龍監督の芸術性の高い作品に参加できたこと、その完成度の高い映像に満足している様子でした。一方、「台本を読んだときは、不思議な話だと思ったのに、それすら自然に受け入れられるくらいおもしろかったので、映像になったときにどうなるんだろう……というのがすごく楽しみでした。実際に完成したものを見て、最初にギターの音が流れた瞬間、かっこいいな! って(笑)。ほかにも衣装や美術から何から何まですべてがかっこいいんですよね。今の時代にはあまりない映画だったので、もっとこういう映画があればな、と思った作品でした」と黒木さん。綾野さんと同じく、この作品の世界観にどっぷり魅了されたようでした。
花が女性の胸にしか咲かないというのは理にかなった設定
ストーリーに出てくるシャニダールの花は、女性の胸にしか咲かないという設定。「女性は子どもを産むことができるので、その設定は理にかなっていると思いました。しかも、その人の精神状態が花に影響するというのも、全部がキレイすぎるくらい噛み合っていますよね。本能的に女性への畏怖心のようなものはありましたが、この映画で、より女性に対して何か圧倒的なものを感じました」と女性の強さを改めて実感したという綾野さん。映画では、そういった男女のちがいが浮き彫りになるようなシチュエーションもあり、シャニダールの花をめぐって、大瀧と響子がもめるシーンも……。黒木さんは、「花と会話をしていた本来の大瀧さんがしていたことが、あのシーンからできなくなっていく……。この描写がすごく悲しくて切ないな、と思いました。あの場面で感じたことは、男の人は単純だって言いますけど、単純じゃない気もしたんです。女の人は複雑なことが起こったとしても、自分の中で割と理性的に解決できるな、と思っていて。でも、男性はいろんなところに寄り道していかないと自分を納得させることができないのかな、と思います」と言い、これには綾野さんも「的を射てるね!」と納得の様子。恋愛のシーンでよく見られるような男女のちがい……。そんなところも深く考えさせられる作品になっています。
恋愛ってものすごくコミュニケーションをしなければならないもの
映画の中で描かれているシャニダールの花は美しくもあり、一方で怖いものという印象も。そんな表裏一体の要素を持つこの花は、恋愛の比喩のようにも感じられます。そして、黒木さんは自身の恋愛観について、「ものすごくコミュニケーションをしなければならないものだな、と思いますね。だって、『これを言いたくないけど、言わなくちゃ前に進まないな』とか(笑)。そこが一番つらいけど、いろんなことを考えたり、感じることができるものでもあると思っています」と語ります。一方、綾野さんは、「苦しいことばかりで、楽しいことなんて1割くらいじゃないですか。でも、それだけでもいい気はします。僕は恋愛することって絶対に豊かなことだと思っていて、よく人を好きになると景色が変わって見えるって言われるけど、それも悪くないと思います。仕事にもいい影響になると思うし、むしろ進んでやってもいいものなんじゃないかな、とこの年になって思えるようになりました」。一番濃密なコミュニケーションをとることが楽しくもあり、つらくもある恋愛。たとえつらいことが多いとしても、そこから得るものはあると語るお2人の話は、ついつい恋に臆病になってしまう働く女子たちの背中を押してくれそう。恋愛観や人生観、男女のちがいなど、さまざまに深く感じることができる映画だと感じました。
映画『シャニダールの花』
(配給:ファントム・フィルム)
極少数の限られた女性の胸にだけ、見たこともない世にも美しい花が咲くという不思議な現象が起こっていた。そして、この花が満開になったときに採取された花の成分が画期的な新薬の開発につながるということで、億単位で取引されていた。それらの研究をしているシャニダール研究所に勤務する植物学者の大瀧(綾野剛)とセラピストの響子(黒木華)は、提供者の胸に芽吹いた花を育て、一番美しい形で採取するという同じ使命を追っていくうちに、次第に恋に落ちていく。ところが、花を採取するときに、提供者の女性が謎の死を遂げる事件が相次ぎ、大瀧は研究所への不信感を抱きはじめる。一方、響子は危険な花だと知りながら、この花の魅力にのめり込んで行き、お互いに合っていたと思っていた歯車が次第に狂いはじめ……。●7/20(土)より、テアトル新宿ほかロードショーキャスト:綾野剛、黒木華、刈谷友衣子、山下リオ、古舘寛治、伊藤歩監督:石井岳龍▼『シャニダールの花』についてはこちら