お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

【新連載】苦しかった彼との恋は、今ではまるで夢のよう……

大輔にふられたその時から、
わたしは約一週間、高熱を出して寝込んだ。
インフルエンザだったので会社も一週間休んだ。

そして長い眠りから目覚めた時、
なんだか自分が4年間の長い夢から、
目覚めたようにも感じた。
いつも心の中にいた大輔は、もういなかった。
これまでの4年間はまるで、
自分の感情でできた大きなビニール袋に入って、
暮らしていたようだ、と思う。
ひとりの寂しさに閉じ込められ、
不安でぐちゃぐちゃになって、生きてきたのだ。


「ね、今度ゴルフの打ちっ放し行きましょうよ」
加賀くんに問いかけられて、ふと我に返る。
営業所に通う道では、どこかで蝉も鳴き出した。
「そうねー、どうしようかな」
実は最近、接待ゴルフに駆り出されるので、
これは練習しないと、とは思ってるんだけど。
でも迷っているうちに営業所に着いてしまった。

カードキーで通用口を開けようとすると、
不意に黒くて素早い小さな影が、
ぶんっ、とうなりをあげて目の前を行きすぎた。

次のページを読む

SHARE