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あんなにひどいことをされたのにどうしても好きで

わたしが店に入るとサッと手を上げ、
圭司は席につくよう促した。
仕事の帰りだろうか、スーツ姿だ。
「よかった、来てくれて。元気だった?」
「まあ、何とかね」
圭司は少し弱々しい笑顔で、こちらを見る。
「食事まだだよね。何か食べよう」

少し迷って、ふたりでビーフシチューを頼んだ。
それに圭司は赤ワインのハーフボトルも頼む。
「ひさしぶりの再開に、乾杯」
グラスはチリンと気持ちのいい音をたてて触れ合い、
わたしの心はみるみる1年前に逆戻りする。
……どうしてだろう。
あんなにひどいことをされてきたのに、
目の前にいるこの人が、どうしても好きだ。

「梨緒。許してもらえないと思うけど、
ごめん、本当にすまなかった」
テーブルの向こうで、圭司が頭を下げている。
ああ、こんなシーンを何度夢見たことか。
わたしはとろけそうな気持ちで圭司を見ていた。
でもその時、誰かが来店したようで、
背中に冷たい風が吹きつけた。
振り返ってカフェのドアの方を見ると不意に思い出す。
圭司とここに入った、あの年上の女性のことを……。

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