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忘れたいから


わたしは早足で家に入ると、
メール便をハサミで開封し、逆さにした。
テーブルの上には春物のシフォンのスカーフと、
圭司がお誕生日に買ってくれたペリドットのピアスが、
小さな音をたてて滑り落ちる。

しばらく見ていると、封筒に涙がポタポタ落ちた。
覚悟はしていたけれど、胸が痛すぎる。
圭司と4月に別れてから半年以上、
忘れるためできる限りの努力をしてきたのに。
スカーフをつけて出かけたデートや、
ピアスを買ってもらった日が次々と胸によみがえる。
そして封筒の裏には、彼の新住所が。
そんなことすら、とてもうれしい自分がいる。

……いけない。こんなことじゃダメだ。
少し迷った後、深呼吸をして慎吾さんにメールする。
「ちょっと悲しいことがあって。
元気を出したいからメールしちゃいました。
そしたらけっこう気分が楽になって。ありがとう!」

そんなメールを慎吾さんに送ると、
本当に気分が落ち着くから不思議だ。
気を取り直してお茶を入れたところで、返信が届く。
「悲しいことって、何かな。
もしよければ電話してもいい? 話、聞かせてよ」

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