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見てはいけないもの


水曜日、アフター6のお楽しみはヨガスクール。
銀杏の葉が色づきはじめ秋めいていく街を、
バッグを抱えて、少し緊張しながら歩く。

それは今週も「あのお店」の前を通るから。
そこは半年前に別れた圭司と月に1度は訪れたカフェ。
あのカフェの前を通るたび、扉を開けてくれた彼が、
「梨緒」とわたしの名前を呼び、背中を軽く押して、
エスコートしてくれたことを思い出してしまうから。

今日こそ見ない。見ちゃいけない。
でもやっぱり車道を隔てた向こう側、
みかん色の灯が歩道にこぼれる、あの店を見てしまう。
あの頃、彼がゆっくり押し開けた、あの扉……。

「あっ」
わたしは足を止め、せわしなく車の通り過ぎる、
道の向こうに目を奪われた。
そこにはあの日と同じく、扉を開ける圭司の背中が。

ただ違うのは、彼が他の女性といっしょなこと。
しかもその人はたぶん、わたしより圭司より年上みたい。
そして彼は、彼女の背中ではなく、
腰に手を回すようにして、店に入った。
その仕草は、先輩や友だち相手じゃない。
あれは、彼女へのしぐさ以外にあり得ない!!

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