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ひとりにしないで-9

 

 

 

 

「いいね、それ。わたし一人暮らしする!」
笑って宣言すると、可穂は小さく拍手をくれて、
わたしたちは同じジョッキでさらに乾杯した。

それからは、やってきた冷奴やサラダをツマミに、
上司の悪口や芸能人の噂話、
さらには「どんな所にすみたいか」の話で、
笑いすぎて腹筋が痛くなるほど盛り上がった。
何だか目の前が、急に明るくなった気がする。

「女の子なんだから、もう少し早く帰りなさい」
家に帰ると、寝巻き姿の眠そうな母が、
玄関に出迎えてくれた。
「はーい、ごめんなさい」
口先だけだけど、母には素直に謝ることにしている。

「それでね、明後日からママ、旅行に行くじゃない?
そのこと明日、パパが起きたら伝えておいて。
ママは午前中から、お友だちと買い物に出ちゃうから」
「……はーい」

内心またかと思う。父に伝言が必要なのは、
母が午前中から買い物に出るせいではない。
ふたりはもう10年近く、面と向かって話をしてない。
少なくともわたし自身は見たことがない。
いわゆる、家庭内別居というヤツだ。

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