お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

みんなの恋人-3

藤の花は巨大な滝のように、
崖中に花のしぶきを撒き散らしている。
わたしたちは車を降りて、
その様子をしばらく、ただ黙って眺めていた。
「今年も、ふたりで来れてよかったね」
涙ぐみそうになったわたしに、和幸が笑って言う。
「これからもふたりで来よう。来年も再来年もずっと」
それからしばらくして、他の車が入ってきた所で、
わたしたちはその場を立ち去ることにした。
晩御飯はどうしよう、なんて話が出る頃、

 

 

 

 


突然、和幸の携帯が鳴った。
「あーっ、こんな時に非常回線が鳴るなんて!
杏子悪いな、着信ボタン押して、俺の耳に携帯当てて」

和幸は着信音より大きな声で、叫ぶように言う。
わたしはワタワタしながら携帯に出て、言われた通り、
和幸が運転しながら電話に出られるようにした。

「はい、はい……えっ、お店でお客さんが倒れた?
で、救急車は呼んだ? うん、ナイス判断。
わかった。じゃあ、ぼくも今から行くから」

和幸は電話を切るよう合図すると、大きなため息をつく。
「杏子ごめん。お店でお客さんが倒れたんだって。
おれ……行かないとダメだわ」

お役立ち情報[PR]