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みんなの恋人-2

そのペンキで赤いハートが描かれた南京錠は、
フェンスの中間に、つつましく下がっていた。
この10年近くも外れずにいる南京錠を見ると、
どんな困難も、ふたりなら乗り越えられる気がしてくる。

例えば今、和幸は地元のファミレスに勤めていて、
お店2軒分の店長をまかされていて、
それはそれは忙しく、デートらしいデートも、
1カ月ぶりくらいになる。

 

 

 

 


それでもわたしたちは、あの南京錠みたいに、
どんなきびしい状況でも、手を放さずにいられる
……なんて思わないと、ちょっとやってられない。
一瞬、そんな苦笑いをした後で、
わたしたちは再び、展望台に戻り、
昔から変わらない、オバちゃんの屋台で、
昔通りの赤いウィンナーのホットドックを買って食べた。

そうして車は、元来た道を戻って、
途中から舗装の切れた山路に入る。
石がゴロゴロしているせいで、車は上下にバウンドした。
ときどき背の高くなった笹の枝が、車体をパシッと叩く。
そんな道なき道をゆるゆると入って行くと、
突然、視界が開けて、ほぼ水平に切り立った崖が、
わたしたちの行く手を阻んだ。
そしてその崖には、藤がいっぱいに蔓を伸ばし、
今、一面に藤色の花を咲かせていた。

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