お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

68話 懐かしい後姿


雨が降って、森が豊かになるように——
つらい片想いも、あの夜の涙も、私には必要なことだったのだと思う。
和哉を好きになって、NYへ行って、私は前より成長した。
外から見たら同じに見えるかもしれないけど、内面は違う。
まわりに対して変わったのではなく、自分に対して強くなったのだ。
NY大に通うミクさんのアンケート、
『あなたが本当にやりたい仕事はなんですか?』
今なら、ちゃんと答えられる。

NYに比べたら、東京はずいぶん暖かい。
とはいえ、さすがに2月の夜風は冷たくて、私は首をすくめた。
「寒そうだね」と古川さんは自分のマフラーを外し、私の首にかけた。
せっかくの好意を拒絶するのも悪い気がして、
「ありがとうございます」と、そのまま彼のマフラーを巻いた。
彼の優しさは、いつも温かい。

「カドマツフーズ、感触よかったね」
「古川さんが紹介してくれたおかげです。
次回の役員プレゼンは、大谷と一緒にバッチリ決めますよ」
「がんばってね。ところで、食事はどうする?」
「古川さんに時間があるなら、一緒に食べましょうよ」
そう言って角を曲がったとき、
前方に見慣れたネイビーのコート姿が見えた。
まさか——……和哉?
その後姿を追って、私は駆け出した。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

お役立ち情報[PR]