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56話 ドキドキの正体


窓際の席は夜景がよく見えるよう、横並びに近い配置になっている。
少し体を動かすだけで、触れ合ってしまうくらいの距離感。
菱山さんが近づいてきて、その指先が私の口元に伸びた。
突然のことに頭はパニックで、胸が破裂しそうになる。

「ソース、ついてるよ」
菱山さんが私の口元をぬぐった。
恥ずかしいと思うのと同時に、ああ、そうだったのかと納得した。
菱山さんといるとドキドキしてしまうことが多い。
それはきっと、菱山さんのフェロモンが私好みだからだ。
そして菱山さんは人をドキドキさせる術を心得ているんだと思う。
無意識か故意かはわからないけれど、心のすき間を見つけて
スッと入ってくる。そういう天性の才能がある人なんだ。
でも、私はそういうドキドキを求めているわけじゃない。
私が本当に欲しいものは……。

そろそろ、菱山さんに聞きたかったことを
ダイレクトに尋ねてみよう。そのために今日は来たんだから。
「菱山さん」と私は切り出した。
そのまじめな声に反応して、菱山さんの食事の手が止まった。
「昨日、私、彼氏と話し合ったんです」
菱山さんは表情ひとつ変えずにナイフとフォークを再び動かして、
「そういうの、言わなくていいよ」と言った。
どうして? 知りたくないの?
『そんな彼氏、別れちゃいなよ』と言ったのは菱山さんなのに。
芦田さつき(28)
輸入販売会社の事務員から新規事業のアシスタントに。
春野誠(30)
さつきの彼氏。公務員。趣味は料理とスイーツの食べ歩き。
菱山謙司(30)
コンサルタントとして派遣され、新規事業立ち上げの責任者に。
川口結実(26)
さつきの後輩。かわいくてモテるが、なかなか恋人ができない。
相原香里奈(22)
スイーツ好き。誠と仲がいい。

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