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39話 こんな夜中に


菱山さんに向かって『誠』と言ってしまうなんて——!
恥ずかしくて、顔が熱くなる。
「すみません! ちょうど電話を切ったところで、あの……」
「彼氏と電話中だった?」
「いえ、あの、もう終わったので、大丈夫です」
菱山さんはとくに気にしていない様子で、淡々と言った。
「週末の勉強のためにって芦田さんに渡した資料の中に、
間違って別件の資料を入れちゃってないかな?」
見てみると、見慣れない資料がまぎれて入っていた。
「それ、休みの間に必要なんだ。迷惑じゃなければ、今から
取りに行っていいかな? もうすぐ芦田さんちの近くなんだ」
え? 今から? 
時計を見ると午前1時を過ぎている。
非常識な時間だけど、菱山さんの熱心さを思うと断りにくい。
それどころか、菱山さんに会えると思ったら、
誠との別れ話のことが頭から吹き飛んでいることに気づいた。
メイクを落とす前でよかった、と思いながら鏡を見た。

「着いたよ」という電話でマンションの下に行くと、
停車したタクシーの前に菱山さんがいた。
菱山さんは私の顔をじっと見た。
「……泣いてたの?」
え、何でわかったの? と思いながら、恥ずかしさに目を伏せた。
「そんな彼氏、別れちゃいなよ」
うつむく私を、菱山さんが抱きしめた。
頭が真っ白になった。心臓の音だけが激しく響いている。
このまま何も考えずに、ずっとこうしていられたら——。
長い抱擁のあと、私たちは自然に、ゆっくりと、キスをした。
芦田さつき(28)
輸入販売会社の事務員から新規事業のアシスタントに。
春野誠(30)
さつきの彼氏。公務員。趣味は料理とスイーツの食べ歩き。
菱山謙司(30)
コンサルタントとして派遣され、新規事業立ち上げの責任者に。
川口結実(26)
さつきの後輩。かわいくてモテるが、なかなか恋人ができない。
相原香里奈(22)
スイーツ好き。誠と仲がいい。

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