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34話 嫌。行かないで


結局、菱山さんが片づけるのを待って、一緒に会社を出た。
——さっきは誰にメールしていたんですか?
なんて聞けるわけもなく、仕事の話をしながら道を歩く。

彼女がいなくても、候補はいるのかもしれない。
そんな当たり前のことを想像したとたん、嫌だなと思った。
菱山さんに彼女ができてしまうのは嫌だ。
私にはそんなことを思う権利さえないのはわかっているけれど。
もし、私に誠がいなければ……。

そんな思いが自然とわいてきたあと、自分に愕然とした。
私は、誠と別れて、菱山さんと付き合いたいと思っているの?
まさか。
誠には不満がいくつもあるけど、別れたいと思ったことはない。
会えば楽しくて、ちゃんと好きだと実感する。

地下鉄の入り口の前で、菱山さんは立ち止まった。
「じゃ、ここで。僕はタクシーで行くところがあるから」
まるで石を投げつけられたように、心が痛んだ。

——誰に会いに行くの?
——嫌。行かないで。

私は言葉を飲み込み、黙って菱山さんを見つめた。
菱山さんもじっと私の目を見ていた。
芦田さつき(28)
輸入販売会社の事務員から新規事業のアシスタントに。
春野誠(30)
さつきの彼氏。公務員。趣味は料理とスイーツの食べ歩き。
菱山謙司(30)
コンサルタントとして派遣され、新規事業立ち上げの責任者に。
川口結実(26)
さつきの後輩。かわいくてモテるが、なかなか恋人ができない。
相原香里奈(22)
スイーツ好き。誠と仲がいい。

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