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26話 本当にいいの?


菱山さんがドアを背中にした私に近づいてきた。
そして、何かを言おうとしたちょうどそのとき、
ブルルルル……と私のバッグの中で携帯が振動した。
「携帯、鳴ってるよ」
「……いいんです」
きっと誠からだ。
大切な彼氏のはずなのに、邪魔者のように感じてしまった。
罪悪感ではなく、いらだちに似た感情がかすかに芽生えた。

菱山さんは『本当にいいの?』と尋ねるように、
私の顔を覗き込んだ。
急に怖くなった。
先に進んではいけない、そんな躊躇する気持ちがこみ上げてきて、
頬がこわばるのを感じた。
そのとたん、菱山さんの表情が仕事モードに切り替わった。
「明日は7時に朝食を取るつもりだけど、
芦田さんも同じ時間でいいかな?」
「はい。大丈夫です」
「そのまま部屋に戻ったらすぐにチェックアウトできるように、
荷物をまとめておいて」
「準備しておきます」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
菱山さんはそれだけ言うと、自分の部屋へと歩き出した。
私はルームキーを手に、その後姿を見送っていた。
芦田さつき(28)
輸入販売会社の事務員から新規事業のアシスタントに。
春野誠(30)
さつきの彼氏。公務員。趣味は料理とスイーツの食べ歩き。
菱山謙司(30)
コンサルタントとして派遣され、新規事業立ち上げの責任者に。
川口結実(26)
さつきの後輩。かわいくてモテるが、なかなか恋人ができない。
相原香里奈(22)
スイーツ好き。誠と仲がいい。

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