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25話 ホテルの部屋の前で


私はためらいながらも、「います」と正直に言った。
すると菱山さんは顔色ひとつ変えずに、
「その彼氏は幸せだね」とだけ言った。
どうしてそんなことを言うんだろう?
どうして急に彼氏のことなんて聞いてきたんだろう?

もしかして……という思いを頭の片隅に追いやり、食事を続けた。
菱山さんは「甘いものは苦手だから」とデザートをパスした。
そして食後の紅茶を飲みながら、
「紅茶と緑茶の葉っぱが同じだなんて、信じられないよね。
同じ葉っぱが、その後の過程でこんなに変わるなんて不思議だよ」
と感慨深げに言った。
「人も、同じかもしれないですね」と私はつぶやいた。
「え?」
「あるときまでは大差ないのに、経験で大きく変わってしまう。
そんな気がします」
同い年の菱山さんと誠の違いは、経験の違いなのかもしれない。

紅茶を最後の一滴まで飲み干して、私たちはレストランを出た。
「じゃあ、また明日よろしくお願いします。おやすみなさい」
そう言って部屋のドアを開けようとしたとき、
菱山さんに見つめられていることに気づいた。
私たちの間の空気が張り詰める。
どこか甘い緊張感に胸がざわめく。ときめきよりももっと強い……。
菱山さんが一歩私に近づいた。
芦田さつき(28)
輸入販売会社の事務員から新規事業のアシスタントに。
春野誠(30)
さつきの彼氏。公務員。趣味は料理とスイーツの食べ歩き。
菱山謙司(30)
コンサルタントとして派遣され、新規事業立ち上げの責任者に。
川口結実(26)
さつきの後輩。かわいくてモテるが、なかなか恋人ができない。
相原香里奈(22)
スイーツ好き。誠と仲がいい。

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