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9話 まずいこと言った?


会議室にカップとやかんを持ち込み、紅茶を順番に淹れていった。
「ミネラルウォーターじゃなくていいの?」
「はい。汲みたての水道水のほうが、酸素が多いので、
おいしい紅茶になるんです」
「へぇ。芦田さん、勉強してるんだね」
昨夜、『1杯の完璧な紅茶の入れ方』を誠に教えてもらったし、
紅茶に関する本を2冊読んだ。
一夜漬けの知識だけど、勉強しておいてよかった。

「日本茶は湯飲みを温めるけど、紅茶は温めないの?」
と菱山さんがまた質問してきた。
「菱山さんのおっしゃるとおり、本来は
カップをお湯か電子レンジで温めておくのがセオリーみたいです。
でも今日はお茶会ではなく、飲み比べなので、少し冷めているくらいが
すぐに飲めていいと思って、あえて温めませんでした。
といっても、95℃のお湯で入れた紅茶ですから、十分熱いですよ。
2杯分をポットで蒸らすことで、おいしさも引き出せています」
私の答えを聞いて、菱山さんは真顔になった。
え? なにかまずいこと言ったかな?

不安になった直後、菱山さんがほほ笑んだ。
「部長に『アシスタントには優秀な人を』ってお願いしたんだ。
人選に間違いがなかったみたいで、嬉しいよ」
優秀、なんて言われたのは初めて——……菱山さんの顔を見るのが
恥ずかしくて、私は無言で紅茶を淹れ続けた。
芦田さつき(28)
輸入販売会社の事務員から新規事業のアシスタントに。
春野誠(30)
さつきの彼氏。公務員。趣味は料理とスイーツの食べ歩き。
菱山謙司(30)
コンサルタントとして派遣され、新規事業立ち上げの責任者に。
川口結実(26)
さつきの後輩。かわいくてモテるが、なかなか恋人ができない。
相原香里奈(22)
スイーツ好き。誠と仲がいい。

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