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63話 思いやりの意味


感動的な映画を観て、本物の愛について語り合って、
せっかくいいムードになっていたのに……。
私はがっかりした表情を隠さず、ストレートに和哉に尋ねた。
「そんな風にトゲのある言い方をするのは、前に私が
『思いやりがあるなら、連絡をちょうだい』と言ったことが
気に入らなかったって意思表示?」
和哉はいつものクールな顔に戻っていた。
「そうじゃなくて。莉緒が求めている思いやりって意味が、
いまいちわからないんだ。
愛情って、連絡の回数ではかるものじゃないだろ?
外泊するときには連絡を入れる、それはわかった。他には?」
どうやら和哉は、意地悪で言っているわけじゃないらしい。
私が求めている優しさの意味が、本当にわからないみたいだ。

「あれして、これしてって言いたいわけじゃないの。
今よりほんのちょっとだけ、私のことを考えてほしい。
私がどんな気持ちでいて、どんなことに悩んでいるのか、
気にかけてほしい。たったそれだけのことなの」
和哉は『いまいちわからない』という顔で、聞いている。
「たとえば今日、和哉がおいしいリゾットを私にも食べさせたいって、
チェルシーに連れて行ってくれたの、すごく嬉しかった。
そんな風に、私のことを気にかけてくれることがあると、嬉しい」
「じゃあ、今のままでいいってことだろ?」

彼がわかってくれるときは、永遠にこないのかもしれない。
この心の芯にある深い孤独を抱えて、
和哉と一緒にいることに意味があるのだろうか?
さっきまで和哉との生活に傾いていた心の針が、反対側に大きく振れた。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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