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62話 幸せが続くように


「ヨリを戻すなってあんなに忠告したのに。バカじゃないの?」
と叶絵は怒った。「35を過ぎた男が今さら変われると思えないよ。
きっと同じことを繰り返すよ。それに他の女の気配もあるなんて」
浩之さんが笑顔で電話に出た話のことだ。
「あれは、仕事相手からだったみたい」
「本当?」
「うん。今はそういうのもちゃんと話し合えてるの」

今でも浩之さんは、ときどきムッとしたり怒ったりする。
私が彼と向き合うことをさけて、冷たいムードになることもある。
でも、そんなときはお互い、待受けにした軽井沢の写真を見せ合う。
すると、付き合い始めたころの気持ちや、
あの雨の日のことを思い出して、自然に仲直りができるんだ。

「『好き』って想いから始まった関係って、強いんだね。
私、条件で結婚相手を選ぼうとしてるのって、間違ってるのかな」
叶絵がしみじみとした声で言った。
私の選んだ道が幸せへの道だとは限らない。
叶絵が言うように、浩之さんは変われないかもしれないし。
いつかお互いの気持ちが冷めてしまう可能性もある。
でも、そうならないように、浩之さんと本物の絆を築いていきたい。

ランチを終えて店を出ると、遠くの空に虹がかかっていた。
あ、浩之さんに教えたい、と思ったら、
浩之さんから先にメールがきた。『虹が出てるよ。見て』
ふいに、軽井沢で夕焼けを見たときのことを思い出した。
同じときに、同じ夕焼けを見て、同じことを思った。
それだけで、涙が出そうなほど幸せな気持ちになった。
今、同じ空の虹を2人で見ている——。
この幸せが、どうかずっと続きますように。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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