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60話 理想と現実


2人で成長してくのが恋愛……それは理想的だと思う。
でも、浩之さんに言われると、
やっぱり叱られているような気分になって、うつむいてしまう。
「私はいろいろ努力してたつもりだよ。
経済の勉強をしたり、ジムに行ったり……」
「詩織のそういうとこも、好きだなって思ってた。
でも、詩織は何でもオレに合わせてただろ?
それじゃ、詩織が本当に望んでいることなんてわかんないよ」

確かに、私はいつも浩之さんに合わせて、ムリをしてばかりで、
気持ちをちゃんと伝えたことってなかったかも。
「じゃあ、私が本当に思っていることを言うから、ちゃんと聞いて」
私の真剣な声に、浩之さんは背筋を伸ばした。
「私、浩之さんは変われないんじゃないかと思ってる。
だって私、今も責められてるような気分なんだもん」

きっぱり言い切ったところで、今度は私の携帯が振動した。
見ると、陽向さんからメールが届いていた。
こんなときに……と思った。中身を読む気にはなれない。
さっき、浩之さんは笑顔で電話に出ていた。
でも、私は陽向さんからメールがきただけで笑顔になったり、
ときめいたりしたことは一度もない。そう気付いた。

私が無表情に携帯を閉じるのを、浩之さんはじっと見ていた。
それから、小さくため息をついた。「詩織の気持ちはわかったよ」
目には寂しさとあきらめが浮かんでいる。
ここでお別れしたら、もう二度とこの人に会えなくなる。
そう思ったら胸が痛んだ……本当にそれでいいの?
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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