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56話 試す言葉


私はすぐには答えられず、カフェオレに視線を落とした。
その直後、「濡れちゃったねー」という声がしたので、
隣の席をなにげなく見た。
女性がバッグからハンカチを取り出し、男性のおでこを拭いている。
そのしぐさはとても丁寧で、彼を愛していることが伝わってくる。
そして、男性の嬉しそうな笑顔にも、彼女への愛があふれていた。

私は浩之さんの顔を見つめた。
浩之さんが本当に私を愛しているのか、
それとも意地や思い込みでヨリを戻そうとしているのか、
私にはよくわからない。
だけど陽向さんなら……あの優しい笑顔で私を包んで、
きっと、ちゃんと愛してくれる——。
そう思ったら言葉がするりと出た。「やっぱり、ムリだよ」

すると、浩之さんは真剣な声で説得してきた。
「詩織に言われたところ、直すから。
ちゃんと詩織のこと、大切にする。
急に『帰れ』なんてもう言わないし」

本当に? 本当に大切にしてくれるの? 繰り返さないの?
浩之さんを試すため、気になっていたアノコトを持ち出してみた。
「ウワサで聞いたけど、本当なの? 会社の後輩に
『できそこないだから指導できない』って言ったって」

急に、浩之さんの顔色が変わった。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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