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50話 プライドの高い男


浩之さんに『別れない』と強く言われて、心が少しだけ揺らいだ。
引き止めるのは、私のことを好きだから?
でも、ここで別れなかったら、また同じことを繰り返すだけ……。
私は自分に言い聞かせるように、ゆっくりと言った。
「浩之さんの愛情は、自分の都合のいいときだけ。
本当の愛じゃないと思う」
背を向けてドアノブに手を伸ばした私に、
浩之さんが「行くな」と言った。
私は振り返らずに、部屋を出た。

「別れて正解だよ」電話の向こうで叶絵が言った。
「でも、でも、つらくて涙が止まらないよぉ」
私は鼻をかみながら、明日は会社を休もうかなと考えた。
いや、ダメだ。最近、仕事の量が増えている。
浩之さんはバカにしていたけれど、私がやらなきゃ、
その分他の誰かが迷惑することになる。
「ぜーったいに、ヨリを戻しちゃダメだからね」
「なんでヨリを戻す前提なの?」
「プライドの高いあの男のことだから、詩織にふられたのが
悔しくて、絶対うまいこと言ってヨリを戻そうとしてくるよ」
「それ、私を好きだからじゃなくて?」
「そういう気持ちもあるかもしれないけど。
それ以上にあの男って見栄っ張りだから……」
叶絵の言い方に、ひっかかるものを感じた。
「なんでそこまで、浩之さんを悪く言うわけ?」
叶絵が沈黙した。何かを隠しているみたい。
そのまま言葉を待っていると、叶絵が「実は……」と切り出した。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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