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49話 別れ際の本音


私はバッグに携帯をしまいながら、玄関へ向かった。
「ちょっと待てよ」と浩之さんが追いかけてきた。
前に突然帰れと言ったときは、見送りもしなかったくせに。
「なんで別れたいんだ? やっぱり他に男がいるのか?」
私が別れようと思った理由を、この人は全然わかってない。
「携帯の履歴はなかったでしょ。それでもまだ疑うの?」
「疑わせるような行動を取ってるお前が悪いんだろ」
「悪いのは私なの? 浩之さんはいつも自分が正しくて、
私が間違っていると思ってるんでしょ。
それって私をバカにしてるんだってこと、やっと気づいたの。
だから、私に『大事な仕事をしていない』なんて言えるんだよ」

私は玄関先に立ったまま、浩之さんに強い視線をぶつけた。
浩之さんはたじろぎ、無言のまま私の表情をうかがっている。
これまでは、いつも私が浩之さんの顔色を気にしていたけど、
別れを告げたとたん、立場が逆になったみたい。
その勢いに乗って、私はこれまでの不満を一気に爆発させた。
「携帯を勝手に見るなんて、信じられない。
それに、急に『帰れ』って言われたときの私の気持ち、わかる?
浩之さんは、私を大事に思っていない。
そう感じるたび、傷ついて、悲しくなって……。
もう嫌なの。別れたいの」

浩之さんは驚いた顔をしたあと、いつもの表情に戻った。
「オレは別れない」
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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