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44話 鳴らない携帯


土曜日は経済の本を読んで過ごした。
浩之さんにふさわしい彼女になりたいと思って買った本。
だけど、ページをめくる手がなかなか進まない。
経済学者の理論も、金融の話も、どうでもいいと思ってしまう。
私が気になるのは、浩之さんのことだけ——。

ため息とともに本を置き、携帯を手に取った。
浩之さんからのメールはきていない。
まだ怒っているのかな。

浩之さんが急に私を部屋から追い出したのは、これで2回目。
今回は翌朝早いから私に帰ってもらいたかったみたいだけど、
1回目の理由は今でもよくわからない。
あんな風にいきなり『帰れ』なんて言わずに、
ちゃんと理由を説明してくれればいいのに。

『本当に優しい人なら、はじめから詩織を傷つけたりしないよ』
叶絵の言葉を思い出した。
付き合い始めたばかりのころの浩之さんは優しかった。
だから、優しいはずの浩之さんを、
私が怒らせてしまっているんだと思っていた。
もし、今の浩之さんが本当で、
最初のころはムリをしていたんだとしたら?
叶絵の言葉を聞いてから、浩之さんの態度に疑問がわいてきた。
それでも、目は自然と鳴らない携帯に引き寄せられる。

浩之さんからメールがきたのは、火曜日の朝だった。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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