お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

43話 モラハラ?


会社の医務室で休んでいると、叶絵が心配してやってきた。
「倒れたんだって? 大丈夫?」
「うん。倒れたっていっても気を失ったわけじゃなくて、
フラフラしてその場にしゃがみこんだだけ。ただの貧血だって」
「もー! ゴハンちゃんと食べなきゃ。トレーニングもやりすぎ」
「うん。でも、トレーニングは続ける。腕がまだこんなに太いもん」
私が二の腕をつまんでため息をつくと、叶絵が顔色を変えた。
「最近の詩織、おかしいよ」

いつになくまじめな口調で叶絵は続けた。
「はっきり言って、詩織、ネクラになった」
確かに最近、すべてに自信をなくしている。
鏡を見ても自分の顔にうんざりする。
「だから浩之さん、優しくしてくれないのかな」と自嘲すると、
叶絵は怒りを顔に浮かべた。
「そこまで追い詰められて……まるでモラハラだよ」
「モラハラ?」
「そ。体への暴力はないけど、言葉の暴力で傷つけられること」
「そんなんじゃないよ。浩之さんは優しい人だよ。
ただ、私が悪いときには、悪いって正直に言ってくれるだけ」
「自分が悪いって思い込まされているんじゃないの?
冷たくされたあとに優しくされると、よけいにじんときちゃって、
それを愛情と勘違いしてるんじゃないの?
本当に優しい人なら、はじめから詩織を傷つけたりしないよ」
叶絵に言われて、考え込んだ。
浩之さんの優しさは本当じゃないの……?
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

お役立ち情報[PR]