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39話 別れたい、別れたくない


私の突然の決意に、陽向さんは驚いた顔をした。
そして「それがいいと思う」と静かに言った。
陽向さんが断言してくれたことで、背中を押された気がする。
私は携帯を取り出し、浩之さんにメールを打った。
『話したいことがあります。これから行きます』

ワインを一気に飲み干し、店を出た。時計を見るとまだ8時すぎ。
浩之さんからの返事はきていない。
でも、今日この勢いで伝えなきゃ、明日には勇気がなくなりそう。
私は陽向さんと別れて有楽町線に乗り、
浩之さんの部屋がある氷川台の駅で降りた。

いつの間にか雨が降り出している。
濡れないよう、出口の手前で電話をかけた。
コール音が鳴った。1回、2回。
緊張が高まっていく。3回、4回。
5回目で、「もしもし」という声がした。
私からの電話に出てくれたことにホッとした。
「今、氷川台の駅にいるの」
「じゃ、来れば?」
これから別れ話をするというのに、
浩之さんに受け入れられて安堵している自分がいる。
ああ、やっぱりまだ、私はこの人を好きなんだ。
別れたいという思いと、別れたくないという思いの
両方があることに戸惑いながら、続けて言った。
「雨が降ってきちゃった。駅まで迎えに来て」
「やだよ。せっかく風呂入ったのに」
心がパリンと割れる音がした。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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