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37話 騙すつもりじゃ


「ごめんなさい。私、陽向さんに嫌われたくなくて、
彼がいることを隠してました」
私の告白に、陽向さんの頬が硬直した。
「あの、騙すつもりとかそういうんじゃなかったんだけど、
彼とうまくいっていなくて、寂しくて、
そんなときに陽向さんと話ができてホッとして。
そうしたら、自然と彼のことを話すのが嫌になって……」

しどろもどろで、自分でも何を言っているのかわからない。
こんなことを言われている陽向さんは、さらに当惑しているだろう。
「ごめんなさい」
私は深く頭を下げた。

すると、陽向さんは不思議そうな顔で言った。
「謝らなくても、いいんじゃないですか?」
「え?」
「だってオレ、詩織さんに彼氏がいるかどうかを
聞いたわけじゃないし。聞かれてないなら、言う必要もないでしょ」
そう言って陽向さんは、口元にほほ笑みを浮かべた。
お日さまみたいに、暖かな笑顔。
陽向さんの心の温かさが、そのまま顔に表れている。

陽向さんは、私のズルさを怒らなかった。
軽蔑もしなかった。
嫌われなかったことに安堵した私に、陽向さんが言った。
「彼氏とうまくいってないって、どうしてですか?」
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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