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34話 とっさの嘘


陽向さんが笑顔で尋ねてきた。「彼氏へのプレゼント?」
「いいえ」
反射的に、そう答えてしまった。
「弟の……誕生日が近いので」
嘘をついた。
私、どうして嘘なんかついたんだろう?
次の瞬間、陽向さんの目尻が嬉しそうに下がるのを見て、
この人は私のことを好きなのかもしれないと思った。
その気持ちを薄々感じていたから、好きなままでいてほしいから、
私は嘘をついたんだ。
食事の約束をドタキャンしたときとは違う後ろめたさが、
心に広がっていく。

陽向さんは無邪気な笑顔のまま、私に尋ねた。
「弟さん、いくつ?」
「25歳です」
「じゃあ、このシャツ似合いそうですね」
それは、このストライプシャツが若者向けってこと?
36歳の浩之さんには似合わないかな?
陽向さんは、小花柄のセンスのいいシャツを着こなしていた。
さすがにこの小花柄は、浩之さんには似合わないだろうと思う。
いくら体を鍛えていて若く見えるとはいえ、36歳の浩之さんと、
27歳の陽向さんではやっぱり雰囲気が違う。

陽向さんの若さに見とれていると、唐突に陽向さんが言った。
「このあと、時間があったら食事に行きませんか?」
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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