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33話 倦怠期以前の問題


私は浩之さんの部屋の中を思い出した。
シンプルで特徴のない、男性っぽいインテリア。
雑誌や洋服がところどころ放ってあって、
洗っていないコップが1週間分シンクに並んでいる。
洗面台には、彼と私の歯ブラシ。そして、私のお泊まりセット。
「女性の気配はまるでないよ。少なくても部屋の中には」
「じゃあ、やっぱりただの倦怠期なのかもね」
叶絵にそう言われたら、不安が少し軽くなった。
「でもさー、いくら倦怠期でも『うざい』って言うのはひどいよ。
言われた相手がどんな気持ちになるか、考えてないよね。
ねぇ、詩織。そんな人でいいの?」

叶絵の言葉が心の中にポトンと落ちて、汚れのように染み付いた。
——そんな人でいいの?
不安は軽くなったはずなのに、心はさらに重くなった。

ランチが終わると、叶絵は約束があると言って行ってしまった。
3人のデート相手を掛け持ちしているから大忙しだという。
私は銀座の街でウインドウショッピングをすることにした。
家に帰って暗い気分に浸るより、
華やかなものを見て気を紛らわせたい。
ビームスに入ると、足が自然にメンズ売り場に向かった。
青いストライプのシャツに目が止まった。浩之さんに似合いそう。
そう思って手に取ったとき、後ろから声をかけられた。
「詩織さん?」
振り向くと、陽向さんが立っていた。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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