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27話 もうひとつのダメ出し


会社が終わった後、毎日スポーツジムに通った。
二の腕に効くというマシンで鍛え、さらに自宅でもできる
トレーニング法を教えてもらって朝と夜に実行した。
だけど、29年かけて蓄えられた贅肉が、1週間で落ちるわけがない。
週末のデートは腕が隠れる七分袖の服を選んだ。

浩之さんとの待ち合わせは、また書店だった。
早く着いたので、フィットネス系の書籍を立ち読みしていると、
約束の時間ちょうどに浩之さんが現れた。
いつもより前髪が多く垂れていて、ところどころまだ濡れている。
あどけない雰囲気に、胸がきゅんとした。
「すぐ裏にあるジムに行ってたんだ」
「私も午前中、うちの近くのジムに行ってきたよ」
「お、がんばってるな」
浩之さんに認めてもらえると、心がぱっと明るくなる。

歩きながら、浩之さんは最近読んだ本の話を始めた。
「ソブリン債と金融工学の問題は根深いよな」
「ソブリン債って?」
「えっ? ニュースでさんざん言ってるだろ?」
聞いたことない、なんて言えなかった。
浩之さんがあきれた視線を私に送っていたから。
「もうちょっと、経済に関心を持ったら?」

二の腕の太さを指摘されたときのように、私の心は再び沈んだ。
素敵な彼氏と付き合うには、自分も素敵じゃなければいけないんだ。
浩之さんにふさわしい彼女になるために、もっとがんばらなきゃ。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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