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23話 奇跡みたいな幸せ


浩之さんと私は自転車をレンタルし、木立の中をサイクリングした。
さわやかな風が気持ちいい。
前を走る浩之さんは、ときどき私をふり返ってくれる。
そのたびに、見守られているような気がしてうれしくなった。
ほんの少し前まで、私が一方的に見つめているだけだった人が、
今はこうして私を見守ってくれている。
これは、奇跡みたいな幸せだ。

夕食の前に、汗を流すため、トンボの湯という温泉に入った。
露天風呂の上に、茜色の空が広がっている。
赤と紫のグラデーションは、美しくて、切なくて、なぜか懐かしい。
この空の色を、浩之さんも眺めているのかな。

温泉を出た後、ハルニレテラスの蕎麦屋に行き、テラス席に座った。
目の前を流れる渓流のせせらぎが、音楽のように心地よく響いてくる。
日本酒を飲みながら、浩之さんが言った。
「さっきの露天風呂で、夕焼けがきれいだったね。
夕焼けって、子どものころを思い出して懐かしくなる。」
「私も懐かしいって思ってた。さっき温泉に入りながら」

同じときに、同じ空を見上げ、同じことを思った。
それだけのことなのに、涙が出そうなほど幸せな気持ちになった。
私は、この人のことが本当に好きなんだ。
でも浩之さんはどうなんだろう?
どれくらい私を好きなんだろう?

そして、問題の「夜」がやってきた。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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