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19話 マナー違反なのに


浩之さんは、ときどきだけど、肘をテーブルにつけた状態で
ナイフとフォークを動かす。
大人な彼には似合わないマナー違反だ。
だけど不思議と、イヤな気はしなかった。
浩之さんが完璧でないことが、かえって嬉しい。

「次に行く会社は、IT系なんだ。
丸本繊維じゃ先が見えたっていうか。
新しい業界なら、自分をもっと成長させられると思って」
「浩之さんって、前向きでチャレンジ精神旺盛なんですね。
尊敬します」
「詩織ちゃんも、パワーあるよね。
社内で知らないコに声をかけられたの、初めてだったよ」
「私も初めてです、声をかけるなんて……緊張しました」
あのときも緊張したけど、
今だって、大好きな人を前に緊張し続けている。
助けを求めるように、ワイングラスに手を伸ばし続けた。

食事が終わると、私がトイレに立った隙に、
浩之さんが会計をすませてくれていた。
やっぱり年上はスマートだなぁと、酔った頭でぼんやり思う。

店を出ると、浩之さんが耳元でささやいた。
「オレんち、来る?」
そのひと言で、一気に酔いが吹き飛んだ。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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