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16話 どっちを取る?


勇気を出して、話しかけてよかった。
おかげで今、こうして浩之さんに食事に誘われている。

「今度の土曜日はどう?」
頭の中でスケジュールを思い出す。
土曜日は確か……。
私が『あ!』という顔をしたのを見て、浩之さんは自嘲気味に言った。
「そっか、先約あるよね。土曜日だもん」
その日は、陽向さんと食事の約束をしたんだった。
「日曜日なら……」と今度は私から提案してみた。
浩之さんは首を横にふった。
「残念だけど、土曜しかあいてないんだ。来週以降は、転職の状況次第」

陽向さんとの約束が恨めしく思えてくる。
このお誘いを逃したら、もう二度と
浩之さんと食事をする機会はないかもしれない。
次の瞬間、今までの私ならありえないことを口にしていた。

「土曜日、大丈夫です」
「え、でも、予定があるんじゃないの?」
「大丈夫です。女性どうしの集まりなので、私1人くらい行かなくても」
——嘘をついた。
そして、これから陽向さんにも嘘をつかなくてはいけないことを思い、
胸が痛くなった。
それでも、どうしても、私は浩之さんに会いたかった。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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