お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

13話 なにを話せばいい?


浩之さんは私の隣で立ち止まった。
そして、「ここ、いいですか?」と尋ねた。
「どうぞ」
心臓がドキドキと脈打っている。
浩之さんの声が、気配が、彼を包んでいる空気が、
すべてが私をドキドキさせる。
同時に、エレベーターの中で浩之さんに話しかけて、
不思議そうな顔をされたことを思い出した。
あのときの恥ずかしさと胸の痛みがよみがえる。

浩之さんは席に座ると、私の顔をのぞきこむようにして言った。
「この間、エレベーターで……」
「あ、あのときは、すみませんでした。急に話しかけたりして」
「こちらこそ、ごめんね。
せっかく話しかけてもらったのに、あのときは急いでいたから」
「いえ」
私は浩之さんのほうを見ずに、うつむきがちに答えた。

ギッとイスを引く音がしたので左を見ると、叶絵が席を立った。
「私、用があるから先に行くね」
気を利かせてくれたらしい。
叶絵は浩之さんに軽く会釈をし、食堂を出て行った。

あとに残された私はますます緊張した。
浩之さんと、なにを話せばいいんだろう——。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

お役立ち情報[PR]