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6話 リアルな現実


彼が隣にいる——。
緊張で、食事が喉を通らなくなった。
叶絵が『話しかけなよ』と言いたげな視線を投げてきた。
社員数が多いうちの会社では、社員食堂で会うことさえ珍しい。
まして隣の席なんて、こんなチャンスは2度とないだろう。
話しかけたい。
でも、話しかけるきっかけが見つからない。

「あの」
突然、彼の方から声をかけてきた。
嘘みたい。男らしく響く声。それが私に向かって発せられている。
なにを言われるんだろう? なんて答えよう?
心臓が破裂しそうなほど、胸のドキドキが激しくなった。
「しょうゆ、取ってもらえますか?」
何かを期待した分、拍子抜けした。
同時に、そりゃそうだよね、と納得した。
彼にとって私は、たまたま社員食堂で隣り合わせた社員のひとり。
しょうゆを取る以外に、話しかける必要なんてあるわけないか。

「どうぞ」と、しょうゆを渡したとき、彼の社員証がチラリと見えた。
『堤 浩之』——フェイスブックで見たのと同じ名前。
フェイスブックの存在が、急にリアルに思えてきた。
あの画面の先にあるのは、本当の彼のデータなんだ。
その実感が、私に強い衝動をもたらした。
彼のことを知りたい。知らずにいられない。
ランチの後、私はスマートフォンを取り出した。
天野詩織(29歳)
繊維メーカーの事務職。恋愛に臆病でなかなか一歩を踏み出せない。
堤 浩之(36歳)
営業職。詩織が社内で見かけ、ひと目惚れした相手。
竹下陽向(27歳)
取引先のアパレルメーカーに勤務している。自然に話せて、安らげる相手。
本田叶絵(29歳)
詩織の同僚。明るく活発なタイプで、詩織の背中を押そうとしてくれる。

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