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59話 恋か、仕事か


大谷さんからのメールには、PR会社を設立すると書かれていた。
『メディアに告知するだけの広報活動ではなく、
売るためのしかけ作りや、あっと目を引く話題も一緒に提供できる、
総合的なPRサービスを提供していきたいと思ってます』
きっと大谷さんは、決められた範囲でしか動けない今の会社の仕事に、
物足りなさを感じていたのだろう。私もそうだったから、よくわかる。
『難しいことだとはわかっているし、大変な道のりになるでしょう。
だからこそ、一之瀬さんに力を貸してほしい!
会社の立ち上げを手伝ってくれませんか?』

胸が熱くなった。
「私にはなにもない」と沈んでいたときだからこそ、
必要とされていることが身にしみて嬉しい。
それに、大谷さんがやろうとしているのは、新しいPRへの挑戦だ。
今まで「外資系の会社で広報をする」と想像しても
ピンとこなかったけれど、「新しいPRに挑戦する」と考えると
わくわくした高揚感がわきあがってくる。
不安に揺れていた足元に、確かな道をみつけたような気がした。

だけど。
今、日本に帰ったら、和哉を失ってしまう。
私は部屋を見渡した。ときどき、和哉に抱きしめられて座るソファ。
並んで料理をするキッチン。2人で選んだキャンドルフォルダー。
すべてに思い出があって、愛おしい。
和哉との暮らしを捨てるなんて、できるのだろうか。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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