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51話 彼なりの理由


「よ、まあ、中に入って」
インターフォンを鳴らすと、意外なことに透は家にいた。
いつもは遅いのに、今日は早く会社から帰ってきたそう。

缶ビールで乾杯した後、彼はいった。
「ちゃんと説明しなかったのは、悪かった。
実は今回の転職、半分はリストラなんだよ」
「えっ、それどういうこと!?」
わたしは話の意外な展開に、ただ驚いていた。

「オレのいるシステム構築課は今年度で廃止なんだ。
その代わり、商社で必要なコンピュータシステムは、
先輩の作った子会社に発注される」
「そう……だったんだ」
「もちろん、会社に残ることもできた。
でもそうしたら、まったく違う職種で再出発だから、
SEとしてのキャリアは、すべて失う。
オレは迷ったけど、今までの経験の方を選んで、
先輩の作った新会社に転職することにしたんだよ」

なんだ。透の転職は急でも無謀でもなかった。
むしろ堅実で、自分を大事にした結果だと、
……少なくとも、わたしにはそう思えた。

「それで今日は無理だけれど、転職して落ち着いたら、
ちゃんとプロポーズさせてくれないか」

Yesと言いたいところだけれど。そうしたら今度は、
立花さんと別れなくてはならない。
ずるいと思うけれど、今はまだその決心ができそうもない。
海棠瑞希(27)
オフィス家具メーカーの営業事務職。趣味はフラワーアレンジメント。
山野 透(29)
大手商社のシステム部に勤務。上司が起業した会社に転職を決意。
立花貴史(31)
医療器具販売会社の経営陣。かなりの美形。
白石由美(25)
瑞希の後輩で同じ会社の営業事務職。
赤羽美也子(27)
フラワーアレンジメントの教室で知り合った友人。
大島洋幸(38)
瑞希の課の上司。瑞希の働きぶりを頼もしく思っている。
山野美代子(56)
透の母。今回の透の起業は寝耳に水で非常にうろたえている。

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