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雪よりも白い心で-9

「板、折れちゃったの」
「え、じゃあケガしてない? ああ、よかった」

坂口さんは少し笑うとグローブをはずした素手を、
わたしに差し出した。わたしもグローブを脱いで、
坂口さんの手にすがった。熱いくらいに手が温かい。

「この暗さじゃ、スキー1本じゃ降りられないでしょ。
ぼくが背負うから、背中から懐中電灯でコース照らして」

「え、背負うって……おんぶですか?」
「2人で歩くと時間かかるし、かえって危ないよ。
残りのスキーは、明日にでも取りに来ればいい」

わたしはためらったけれど、
結局ナイター設備のないゲレンデを、
懐中電灯で照らしながら、別荘まで滑ってもらった。
坂口さんの滑りは、驚くほど安定していた。

「坂口さん、スキーどこで覚えたの?」
「出身、新潟だから。よく妹とか背負って滑った」
「ふうん。ねえ、タバコはやめないの?」
「やめて、いいことあれば、やめようかな」

その後、坂口さんは急に無言になり、
雪の鳴る音だけが、夜に響いていった。

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