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53話 まさか、事件!?


土曜の昼になっても、和哉は戻らなかった。
携帯に電話をかけたけれど、電波がつながらない。
まさか、事件に巻き込まれたとか?
警察に電話をするべき? それとも、まずは和哉の会社?
パニックになった私は、カミーユに電話した。
“Calm down. You should wait for a while. He isn’t a kid.”
(落ち着いて。彼の帰りを待つべきよ。彼は子供じゃないんだから)
確かに。29歳の大人の男が一晩帰らない、
それは警察に電話するようなことじゃない。

でも夜になっても、彼は帰ってこなかった。さすがに警察に
電話をしようかと迷っていると、玄関で鍵をあける音がした。
——帰ってきた!
私は玄関へ飛んでいき、靴を脱ごうとしている和哉に抱きついた。
「心配したのよ」泣きそうな声が出た。
「え? ああ、ごめん。仕事だったんだ」
そして、和哉は「疲れてるから」と言って私の手をふりほどき、
バスルームに直行した。
あまりにも冷たい態度に怒りがわいた。でも、じっと待つしかない。
やがて、シャワーの音がやみ、やっと話ができると思ったら、
「寝る」という一言だけを残し、ベッドルームのドアを閉じてしまった。

——どうして? こんな気持ちで待ってたのに、話もしてくれないの?
しんと音のないリビングに、私は1人取り残された。
今まで感じたことがないほどの孤独に、押しつぶされそうだった。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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