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33話 微妙な故郷


金曜の夜は、かなり遅くに故郷についた。
食卓には母の手作りの手の込んだ料理が並ぶ。
少し胸が痛んだが、でも同時にそこには、
おたがいにどうしても分かり合えない、
やりきれなさが並んでいるようにも見えた。
父は何も言わない。
大学受験の時、好きにしろと言ったきりだ。
着いた夜も、もう寝ていた。
高校の頃のパジャマを着て眠り、翌日起きると、
坂崎くんと会場予定の駅前のホテルに向かう。

「このホテルができたのは、5年前だっけ」
「そう。あの前田屋がホテルになるなんてね」
前田屋は、地元の小さなデパートで
普段使いより、少しおしゃれな服や食材を売っていた。
今では代わりに、小さいながらも駅ビルができ、
全国チェーンの店がいくつも入っている。
「あら何、さくらちゃん帰っていたの?」

ホテルの前に坂崎くんと立っていると、
実家の隣のおばさんが、うれしそうにこっちを見ている。
「ええ、この週末だけ。同窓会の下見に来ました」
「あらそうなの。まあ、そう、ふふふふふ」
おばさんは意味深な笑いを浮かべ、行ってしまった。
……あの人、また変な噂を広めるんだろうな。
故郷は懐かしいけれど、やはりひどく落ち着かない。
山際さくら(27)
食品メーカーで一般職勤務。がんばり屋でしっかり者。
美浜 杏(27)
さくらの高校時代の友人で、損害保険会社に勤務。
橋場健斗(31)
製薬会社に営業職で勤めている。仕事にとても積極的。
坂崎 新(27)
さくらの高校時代の同級生で、地元の航空会社に勤務。
朋納寧々(23)
さくらの会社の後輩。かわいい外見の上、親が裕福なお嬢様。

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