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27話 観覧車


「あれ、富士山だよね」
ゴンドラの窓の向こうには、桃色の空を背に、
富士山がラベンダー色のシルエットを横たえていた。
「きっとそう。本当にきれい」
せっかく橋場さんとふたりっきりなんだから、
もっと気の利いたことを言いたい。
でも、このきれいな東京の夕景に言葉が出ない。
……悔しいな。

「ねえ、せっかくだから写真撮ろうよ」
左斜め上から、橋場さんの声が降りてきて、
わたしははじけるように元気よく
「うん、そうしよう」と答えた。

風景がよく撮れるよう、ゴンドラを揺らして、
アームの写りこまない場所に席を移る。
そして橋場さんの腕が、わたしの肩に回され、
ギュッと抱き寄せられた。
「さ、笑って」
彼の長い腕の先で、携帯のフラッシュが光った。
その後、わたしの携帯でもう一度。

その間に、観覧車はゆっくりと下り始めた。
上る時はあんなに高揚感があったのに、
下りが始まると、急に寂しい気分になる。
ああ、もっとずっとふたりでいられたらいいのに。
山際さくら(27)
食品メーカーで一般職勤務。がんばり屋でしっかり者。
美浜 杏(27)
さくらの高校時代の友人で、損害保険会社に勤務。
橋場健斗(31)
製薬会社に営業職で勤めている。仕事にとても積極的。
坂崎 新(27)
さくらの高校時代の同級生で、地元の航空会社に勤務。
朋納寧々(23)
さくらの会社の後輩。かわいい外見の上、親が裕福なお嬢様。

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