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46話 失くしてからわかるもの


失恋をしたからって、仕事が減るわけではない。
東京に戻った翌日から、会社では目の回るような忙しさだった。
でもその忙しさで、気分もだいぶまぎれた。
昼食もコンビニで買って机で食べる。
といってもわたしは食べ物が摂れないので、
ゼリー飲料でごまかしていた。
「なんだ、それっぽっちの昼飯で。ダイエットか」
高村課長が、ゼリー飲料をすするわたしをからかう。
「いえ、水波先輩は失恋です」
反射的に答えてから、小牧が
「しまった!」という顔で口をおさえる。

「おおそうか。水波にはそういうヤツがいたのか」
高村課長の言葉には、微かに腹をたてたニュアンスがある。
「彼氏といっても遠距離で、もうとっくに終わっていたのを、
わざわざ会って確認してきましたよ」
課長に説明しながら、あらためて自分の恋が、
どんなものだったかを思い知る。
「……まあ、体にだけは気をつけろな」
「ホントに。水波先輩は限度知らない人ですから」
課長も小牧も、その言葉には思いやりがにじんでいた。

こんな会社でのやり取りが、
乾いた心に少しずつ潤いを与えてくれる。
拓海との関係が終わっても、気がつけば、
周囲にはたくさんの心のぬくもりがあった。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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