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45話 涙のあとに


わたしは篠田さんのコートの袖を握りしめ、
とめどなく流れる涙を止めようと戦った。
「ぼくは、ぜんぜんかまわないよ。
こういうとき、平気でいられるわけないから」

篠田さんはそんなわたしの肩に、軽く手を置いた。
その手のぬくもりは、目に見えないパワーになって、
肩から直接、わたしの心の傷を癒してくれた。
どのくらいそうして、甘えていたのか。
荒れ狂う感情が治まると、
心は空っぽになり、不思議な静けさが訪れた。
きっと今、わたしの中でひとつの時代が終わったんだ。
「どこかで、あったかいものでも飲もう」
「ありがとう」
この言葉は、わたしの心の奥底から出たものだった。

翌日の夜、篠田さんにメールをして、
25日の食事はキャンセルにしてもらった。
気持ちの問題もあるけれど、
それ以前に食べ物がほとんど喉を通らなかったのだ。
そのかわり、年があけたら一緒に初詣に行く約束をした。

篠田さんには会いたかったが、拓海との別れは、
心以上に体が納得してくれない。
拓海とは自分が思う以上に、深い付き合いだったらしい。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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