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44話 心の傷


「いいから。で、今どの駅まで来てるの」
篠田さんのメールには、迷いがなかった。
わたしはその心意気に打たれて、
さっき過ぎたばかりの駅名を、携帯に打つ。
すると不思議なもので、
篠田さんに会いたい気持ちが、じわじわとこみ上げてきた。

待ち合わせは、東京駅の丸の内北口改札。
お休みの日は、あまり人通りが多くない。
改札口を出ると、ドーム状の怖ろしく高い天井の下、
コートのポケットに手を入れて、篠田さんが立っていた。

「やあ、大丈夫?」
「来てくれてありがとう。うん、大したことは……」
と言って、その先が続かない。
篠田さんの顔を見たら、たぶん安心してしまったのだ。
後から後から涙があふれて、止まらない。
「やだ……」
知らなかった。
わたしは自分が思うより、ずっと傷ついていたらしい。
もう、立っているのがやっとなくらいだ。
「ゆっくりでいいから、こっち来て」
篠田さんはわたしを壁際へと誘導し、
自分が前に立って、通る人の視線から隠してくれた。

「ごめんなさい。篠田さんの前で泣くなんて失礼だよね」
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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