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42話 すれちがうわたしたち


わたしはその“もしかしたら拓海の彼女”に、
腰のあたりで、そっとちっちゃく手を振ってみた。
当然、反応はない。
次に顔の横あたりで、普通に手を振ってみた。
すると彼女の首がかすかに、ぐらついたようにも見えた。

そうだ……やっぱりこの人が、拓海の彼女なんだ!
清楚で、やさしそうな人。
きっとこの人なら、拓海を幸せにしてくれる。

「上り電車がきます」のアナウンスがホームに流れた。
わたしは名づけようのない熱に押されて、
バックを肩にかけたまま、バカみたいに頭上で大きく両手をふった。

彼女がゆっくりとこちらを向き、
口を抑え、目が大きく見開く。驚くのは当然だ。

やがて彼女は、わたしに向かって深々とおじぎをした。
その姿をさえぎるように、上り列車がホームに滑り込む。

さようなら、拓海の住む町。
そして拓海と、今日初めて会ったその彼女も。
わたしがこの町へ来ることは、もう二度とないと思う。

もう一度ホームを見ると、そのやさしそうな彼女が、
こちらに向かって寂しそうに手をふっていた。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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