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37話 再び約束の地へ


「……っくしゅ! これは寒い。さすが富士山の近くだ。
やっぱり拓海に、東京に来てもらえばよかったかな」
例のゆるキャラな富士山のプリントされた特急も、
中はきちんと暖かく湿度もあって快適だった。
なので逆に冷たく乾いた風の吹くホームに降り立つと、
たちまち鼻がむずむずして、大きなくしゃみが出る。

改札を出ると、さえぎるもののない青い空を振り仰いだ。
この前来た秋の空より一層澄んで、
富士山同様の神々しい青さだ。

駅前のロータリーには見慣れたブルーのヴィッツ。
近づくとドアが小さく開く。
まるでデジャブのように繰り返される、拓海との逢瀬。
あのメールで感じた予感も、ウソであってほしい。
祈るような気持ちで、助手席に乗り込んだ。
「菜々子、元気そうだね。今日はどこへ行く?」
「ここへ来たなら、またあのうどん屋さんに行きたいな」

そうしてまた、あのお店で名物のうどんを食べる。
「くぅーっ、おいしい。体が芯から温まる感じ」
眼鏡の曇った拓海は、でも口元が確かに笑っている。
もっと見たい、拓海の笑顔が。お願いわたしを安心させて。
「わたし最近、美術館めぐりに凝ってるんだ」
「そっか、じゃあこの町にもアートギャラリーあるけど行く?」
「うん、ぜひ連れて行って」
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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