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36話 イミテーション


「でね、クリスマスの23日は、彼に会いに行くんだ」
「ふうん、そう。ぼくに似ているあの彼ね」
その日も美術館からの帰りは、
篠田さんとたっぷりのスイーツを食べた。
彼はわたしの話に顔色ひとつ変えないで、にっこり笑う。
カフェの窓から見える景色はもう夕闇に沈み、
街にはクリスマスシーズンの、
にぎやかなイルミネーションが浮かび上がっている。

「で、ぼくとはいつ? 25日に食事でもする?」
「え……だけど」
「別にイヤなら断ってくれてもいい。
でも仕事が忙しくないなら菜々子ちゃんは、
この週末1人でいない方がいい。そうは思わない?」
確かに。
会社は不況のおかげで無用な残業を許さない。
それにもし、この金曜あたりまったく予定がない場合、
かなり寒々しい気分で過ごすことになる。

「……いいのかな。そんな甘え方をして」
「いいに決まってるだろ。ぼくは会いたいんだから。
じゃあ、その日は少しおしゃれして来てね。
どこへ行くかは、考えておくよ」
いつもながら篠田さんは強引だな、と思いながら、
今はその強引さがとても心地いい。
リードしてくれる男性って、今時は貴重だものね。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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